4年の実刑とは! あまりに軽い交通死亡事件の刑
平成12年6月8日 弁護士 松 本 誠
東京で常習飲酒運転の車が高速道路上で親4人が乗っていた車に衝突、うち、1才と3才の子供が焼死。業務上過失致死傷罪の刑事事件です。
検察の求刑は5年で、判決は4年でした。
遺族はあまりに刑が軽い、と新聞にありました。
裁判官の立場では、司法統計年報では平成9年版では、3年以上の実刑はなんと2人だけですから、これでも厳しいのでしょう。
しかし、――
かつて、この刑の法定刑は昭和43年に3年が5年に引き上げられたはずです。
これで裁判官としては精一杯だったのでしょうか?
しかし、いい裁判官やなー とはいかないでしょう。
法定刑の上限は5年まであるのだから、5年にして当然でしょう。
量刑の基準が求刑の8掛けとか言われも被害者の遺族は納得しません。
今回の問題は交通事件の処理システムの運用が警察、検察だけでなく、裁判においても甘い運用がなされていることを示しています。
被害者に目がいっていないと思います!裁判官は。二人の子供を殺され、しかもベロンベロンの酔っ払いに殺された無念さは深すぎます。限りのない無念さのはずです。5年で収まるわけが無い深さです。
業務上過失致死罪の法定刑の背景と運用。
そもそも業務上過失致死傷罪の刑は昭和43年に3年が5年に引き上げられました。
厳罰にする政策がもともとはあったのです。
しかし、運用は検察が勝手に仕事を減らすために、起訴率を70%台だったものを13%まで低下させました。このことに根本原因があります。以来、検察はもちろん、警察も裁判所を命を守る使命感がなくなり、ただただ、機械的な処理をしているように映ります。裁判官の今回の判決はそういう機械的な極めて、類型的な処理の一つにすぎないように思えます。
この運用の雰囲気が裁判の現場にも影響していることを示す事件だと思います。
裁判官にありがとうございました。というのは加害者のみでしょう。遺族はなんでこんな甘い刑になるのか。国家のシステムに対する深い疑問を抱くはずです。この思いは殺された憎しみと表裏で国に対する不快な不信の念であります。
フランスでは最近、飲酒運転の場合刑が2倍にされました。イギリスでも同様です。
どの国でも車が増え、交通被害者は増加しているのですからその対策が必要になるわけです。交通意識の面で厳罰化することこそ事故防止になるのであることを根本政策にしているのです。
これらの国の指導者は偉いと思います。
日本はどうか。余りに情けない。なぜか。
あまりの交通事故件数の増加に対し、検察庁が始めた起訴回避主義は70%を13%にまでしてしまい、警察の現場からやる気をなくし、裁判の現場でこんなものでええやろ、という命の安売りを呼び込んでいる実情があります。警察もこれを真似しています。
今回の判決は命の安売り、バーゲンセールの感があります。こう感じるのは私だけではないはずです。一方で、平成12年の交通安全白書は交通事故による死傷者が105万人となったこと、1年間で5%も増えたことを指摘し、死者が減ったといっても高度傷害者が2倍に増えたことを指摘しています。
国は緊急自体であることに気づいていないのでしょうか。
国の交通安全政策の要は道路の改善でも歩行者や子供の交通教育でもない。
ドライバーの意識改革に重点を置かなければならないのです。
車は凶器である。それを前提にして、それを運転するドライバーに注意義務の必要性 をひたすら教える。絶対してはいけないこと、飲酒運転はもっともしてはいけないこと、
それをしたら、それだけで厳罰となり、事故を起こせば10年や、15年の実刑はありうる事、こう言うことが大事なのです。
そういう意味でこの国の交通政策は根本的に間違っています。この国では規範、交通規範において、本家本元である検察や警察は、仕事をしたくないが為に、起訴率を極端に下げて、その結果法の順法意識を抹殺していると言う現実があります。
モラルハザードは交通事故の現場では警察、検察、裁判官、などこのシステムに関わる全員がかかっている病気であるような気がします。被害者や遺族だけがまともな感覚のようであります。事故の被害にあって初めて知る車の運転手の意識の低さを実感するのです。交通モラルが喪失し、また交通死亡事故が発生し、被害者が途方にくれる。この国の交通事故処理システムは病んでいるのではないでしょうか。
立法の必要性
法務省は平成5年の犯罪白書でフランスやイギリスの例をあげ、交通犯罪の実刑率が日本では外国と比較すれば韓国の4分の1、フランスの10分の1と余りに低すぎることを指摘していました。改善が望まれる、悪質な事例には厳正な対処を、とありました。明らかに立法の必要性を示唆するものでした。
当然です。警察が内部基準を作り、全件送致主義を止め、検察が起訴回避主義を採る以上、悪質な事故に対しては10年以上の実刑がないと、警察もやる気が起こりませんし、検察官もやる気が出ません。
指摘した犯罪白書から7年経ちましたが、なんの策も講じられれおりません。
どうしたのでしょうか。
無策の塊でしょうかね、法務省は。身内の問題にふれるからでしょうかね。
検察の起訴回避主義もこの際徹底的に改めないと一旦緩んだ捜査の士気は戻りませんよ。
警察にやる気が無いのは当たり前と国民は皆最近では思ってますからね。