重度後遺症被害者(遷延性意識障害等含む)の症状固定をいつにするのか?
平成13年7月12日 弁護士 松 本 誠
重度後遺症被害者、特に植物状態の被害者の症状固定に関しては誤解された処理をされている場合もありますので、よく相談をうけている立場から説明します。
植物状態の場合に症状固定を早くすることがいい場合、と割り切れる場合はあまりありません。確かに問題なく、医療費だけは無料となるのでしょうが、症状固定、すなわち、後遺症認定の診断書が必要という意味での症状固定までは必要ありません。医療費を無償にするための障害者認定の診断書はその旨言えば、症状固定をしない段階でも医師は必ず書いてもらえます。ですから症状固定しなくとも医療費無償とすべく被害者の会でも進めていることです。事件処理というのではなく、福祉的処理であります。多くの例でそうなってます。
むしろ、その後に問題となるのは、本当に「症状固定」をするのはどうしようか?という悩みです。どうしてなのでしょうか?
植物状態の被害者はよく個室を借りておられまして、この個室代は症状固定しない段階では損保も支払いますが、症状固定後には支払いの対象外となり、自己負担となります。これは医療費の対象外です。第1の問題です。
次に症状固定すると、病院からも自宅介護を強烈に勧めてきますし、自宅介護をせざるを得ないことが当然のことのようになります。これに抵抗することはできません。自宅介護の準備がまた大変なのです。この問題が2つ目の大きな問題です。
3つ目に症状固定したら、自賠責の支払いをうけますが、それ以降の支払いをストップされたり(もっとも最近重度後遺症には継続的に段階に応じてある程度支給がある)、あるいは自賠責金額での内金支払いを上回ることとなる損害の回復をどうするのか、という法律的な悩みに被害者や家族は直面せざるをえません。場合によっては裁判することとなるのですが、裁判や和解等が決まるまでの生活費は自己負担となる場合が多く、裁判や和解の悩みを抱えながら、生活上の悩みも解決していかなければならないこととなるのです。3番目の問題です。
さらに被害者側に過失があるとされる場合には、症状固定をいつにするかはさらに切実な問題である場合があります。先ほどの部屋代はもちろん、自宅の改造費用、将来の介護のための費用、ヘルパー等費用(とりあえずは自己負担)はすべて最終的にも自己負担となる可能性がありますから、症状固定をいつにするかによって、心理的負担がまったく違うのです。ですから植物状態の家族が症状固定をすぐにするわけにはいかないのです。悩みがずっと続く被害者家族も多いのです。4つ目の問題です。
これらの4点ほどの問題を整理しながら、いつを症状固定とするのかは重要なことなのです。事件処理ノミに焦点を絞らずに被害者家族の立場から症状固定問題を議論して欲しいものです。