公判最後の加害者の態度
平成15年6月18日 弁護士 松 本 誠
公判で被告人に裁判長が最後に言います。『最後に何か言いたいことは』と。法廷ではなくインターネットを通じた証言を加害者は残しました。今問われています。
平成15年3月25日(火)讀賣新聞記事に『交通事故加害者 ネットで遺族中傷 泉佐野署 書類送検へ「二重に苦しめた」』とありました。
記事は次の通り。『交通事故で高校三年の男子生徒を死亡させ有罪判決を受けた大阪市平野区の男性会社員(28)が公判中に、遺族を中傷する文言をインターネットの掲示板に書き込んだとして、大阪府警泉佐野署は25日午後、この会社員を名誉棄損容疑で書類送検する。「求刑に動揺し、イライラを紛らわそうと書いた」などと話しているが、遺族は事故で一人息子を奪われたうえに、中傷で大きなショックを受けており、同署は「悲しみに沈む遺族を二重に苦しめる悪質な逆恨み行為」として、送検に踏み切った。調べによると、会社員は2000年4月、泉佐野市内で乗用車を運転中、カーブで制限速度を約40キロオーバーして反対車線にはみ出し、ガソリンスタンド前でミニバイクにまたがって停車中の熊取町内の男子生徒(当時17歳)をはねて死亡させた。業務上過失致死罪で起訴され、懲役2年を求刑された翌年7月初め、ネット上の掲示板に両親の実名を記載したうえで、「最悪」「ただの出しゃばり」などと中傷する文言を書き込んだという。会社員は同月下旬、懲役2年、執行猶予5年の有罪判決を受け、刑が確定しているが、調べに対し、「思っていることを書き込めば、少しでも気が晴れると思った。軽い気持ちで犯罪になるとは思っていなかった」などと供述。男子生徒のバイク運転について、遺族が法廷で証言した内容にも腹が立ったという。同年10月に、父親が偶然書き込みを見つけて同署に告訴。プロバイダーの通信記録から犯行が分かった。両親は「遺族の気持ちを逆なでするような書き込みで、息子を失った悲しみに加えて怒りがこみ上げてきた。裁判では会社員も苦悩しているということも考慮され、執行猶予がついたが、本心で反省していなかったことになる」と話す。』と。
遺族から公判となった報告を先日頂きました。コメントした関係です。公判第1回目の連絡ももらいました。名誉毀損の公判も画期的ですが、被害者問題としても象徴的事件です。
遺族の立場でいうと、
交通事故刑事裁判では被告人は『一生償う』と言いますが、一度も実行されていない例が数多くあります。こういう嘘が平気で通用する世界を堂々と司法が放置し、国が放置しています。これは明らかな遺族への2次被害。それを変えていかないと、加害者の平気な嘘で2次被害を受ける遺族がなくなりません。
本件で加害者は法廷では殊勝にしておきながら、被害者遺族への攻撃を法廷外でする加害者がいる場合もあり、これについてさえ、裁判官は見過ごしている。意趣返しというか、逆恨みという本件事例は、たまたまの事と見過ごしてはいけないように思います。公判起訴までした検察の勇気には敬意を表すると共に、加害者に対しては『被害者には見られている』ということをわからせなければ、こういう事例は続きます。特に裁判は被害者が排除されている世界。同じ立場の遺族が怒りを共有しておられるようです。ますます加害者天国は変化せず、遺族だけが苦しむ世界が続くとなるからです。