副検事の改革

平成17年9月12日  弁護士 松 本   誠

犯罪被害者保護基本法案の対策としての交通事故被害者対策
 今、犯罪被害者保護法案に基づき具体的施策を検討するため、政府は全国の被害者団体に対して意見の聞き取りをしています。近いうちに枠組みができますが、この中に交通事故被害者を対象にした特別策が含まれる兆しはありません。原状制度の改善で済むのですが。
交通事故被害者の原状の被害は、犯罪被害者と違う点は副検事による2次被害です。 刑事処理システムにおいて、司法3者が平等に参加できる構造にしないと、交通事故制裁が副検事の舞台とすれば、ますます交通事故の被害者は軽く扱われます。交通事故処理システムを変える必要があります。副検事制度改革なくして、交通事故被害者の権利保護は達成できないといってもおかしくありません。交通被害者の声に耳を傾ける政治家がいるとすれば、それは副検事制度の改革に間違いありません。

交通事故遺族の受ける2次被害
 交通事故被害者の遺族が、事故後に2次被害に遭うケースを見てきました。2次被害とは事故後に、被害者や遺族が捜査官.弁護士.副検事などから被害を受けることです。遺族が2次被害に遭わないために何が必要かと尋ねられれば、次のように回答するしかありません。
『事故捜査で良い警察官と良い副検事に恵まれ、刑事裁判でも良い公判検事と良い刑事裁判官に恵まれ、民事でも良い弁護士と良い民事裁判官に恵まれない限り、2次被害に遭います。』と。交通事故の解決過程では被害者と加害者の双方の利害、処理するシステム側の3者の利害が交錯します。交通事件は特に交通事故を軽く扱う風潮があり、被害者の利害よりもシステム側の利害が強く働きますから、被害者の立場で解決されるというのは、非常に難しいとなる仕組みがあります。そのために、2次被害に遭うこととなります。処理システム側の問題点のうち、副検事について触れたいと思います。

副検事で占められる交通検察
 昭和61年まで全国の検察庁には交通部だけでなく、刑事部にも多くの副検事がいました。それが昭和61年に制度が変り、交通部に副検事が集中配備されました。昭和61年は検察が変った年です。それまでは交通事犯も一般犯罪と全く同じ扱いで、起訴率も73%と同じでした。3週間以内の傷害事件は不起訴と決定され、検察内部の多数の副検事を交通部に配置しました。圧倒的事件数を処理する為の政策変更です。この年以降、交通事犯が軽く扱われるようになり、多くの被害者や遺族が泣く事態となりました。刑事裁判によらず、罰金や不起訴が増えることとなったのです。つまり交通事犯は、副検事が検事に代わり、交通事故の処理を担当するようになったとたん、不起訴や罰金が増えるようになりました。交通犯の起訴率は、一貫して下がり続け、12%まで低下しています。 交通事故が軽く扱われる大きな理由が副検事問題かもしれません。

公判起訴を嫌がる副検事 公判事件に熱意が無い副検事 捜査に熱意が無い副検事
 公判起訴をすると、副検事は自分達が法廷に立つ必要があります。しかし、これを是が非でも避けたいという副検事の本音があります。刑事公判法廷は、裁判官と弁護士という司法試験に受かり、一定の研修を受けた法曹がいます。しかし副検事は検事と違い、司法試験に受かっていませんし、事務官の延長での仕事です。ところが、法廷では、被害者のために制裁のために、弁護士や裁判官相手に対等の仕事をしなければならないのに、実は資格の差があるため、副検事は遠慮どころか、弁護士の言い分や裁判官に対して弱腰です。裁判官から何か言われると臆病です。 平等であるべき法廷の3者が実は初めから平等ではありません。この刑事裁判での法廷の力関係こそが、交通事故を軽く扱う風潮を生んでいる元凶です。交通事故の被害者の2次被害そのものが、刑事裁判の構造に原因があります。
公判検事の求刑も低すぎます。求刑を上回る判決事件が、京都と大阪でありましたが、京都地裁判決『交通事故ではポケットティッシュより軽く扱われる命 』との藤田裁判官の言葉が遺族の間で評判になりました。が、よく考えると、検察の求刑があまりに低いのです。求刑を上回る判決というのは、一般刑事事件ではありえません。交通事件を検察は軽く見ているから、2線級ピッチャーを配置するのです。副検事である場合もそうですが、正検事を配置する場合でもなりたての検事ばかりです。 これじゃ、交通事故はいつまでも軽く扱われます。
交通事故の刑事裁判では、被害者が仕事を期待しても、それができない副検事がいるため、被害者の声が裁判や処罰に届きにくい構造です。
被害者に代わり、厳しい制裁を求めるべきが、弁護人と裁判官に遠慮をして厳しい求刑をせず、また弁護人と裁判官から異議を唱えられると言い返せません。これらの事実は、交通裁判を傍聴された遺族の大多数の感想です。
  つまり交通事故の刑事裁判は、一般刑事裁判と違って、初めから被害者にとって不都合なシステムです。加害者の刑を軽くする為の法廷構造があるのです。 だから、加害者もその弁護人も、刑事裁判は『実刑になんかなりっこない』となめてかかるといえます。 元凶が副検事システムです。交通事故を軽く扱われないためにも、交通事故を副検事が担当するのは止めてほしいものです。まずは副検事職で占める交通部を止めてほしいものです。 
傍聴席の被害者や遺族が、検事席にいる副検事に代わりたいと願う場合がどれほど多いか、検察庁は知らないでしょう。

控訴の弱腰
  弱腰の検察モラルは、控訴にも表れます。刑事1審判決が出て、被告人が控訴することはあっても、検察側が控訴するのは数えるほどしかありません。 1審判決が出た後で、遺族は控訴してほしいとの上申書まで書いて、被告人の刑の減刑に対して備えるのですが、副検事は多くの場合、遺族に控訴の希望さえ聞くことは有りません。控訴は仕事ではないと思っているのです。 
民事は、被害者が控訴するのはよくありますが、刑事裁判で被害者側の検察が控訴するのは極めて稀です。理由は副検事問題です。公判検事が副検事で無い場合も、新米検事が多いため、副検事と同じように控訴に前向きではありません。キャリアを積んだ正義感に富む検事に当たることはまずありません。

監視されず、監督もされない副検事 ― 検察審査会
 起訴率の極端な減少政策が始まってから、交通事故は不起訴を原則とするのが、政府方針となりましたから、副検事が加害者を罰金にしても、不起訴にしても、誰も検察内部で文句を言いません。被害者側が後に知っても、対策は検察審査会への申し立てだけです。これが効果的かといえば、副検事に対する圧力にはなりませんから、相変わらず不起訴としてしまう構造があります。というのは、不起訴記録は1部しか開示しないため、被害者が不服をいう材料を入手できません。証拠入手が初めから制約を受けているのです。しかも、審査委員は半年が任期の全員素人。事件を理解しだした途端に、任期終了です。しかも、対審構造ではありません。裁判形式ではありません。素人が書面審査をするのです。被害者の申し立てを聞いてやる、と。 これじゃ、不起訴不当の結論はもちろん、起訴相当の決議はあまり出ません。このため、不起訴が不当とされるのはごく稀です。検察審査会は、検察に対する民主的コントロールだと言われますが、実はこの制度があることにより、検察の身分が逆に保証されている、と言っても過言ではありません。副検事の仕事に対する監督機関ではありません。 また副検事も検察官ですから、裁判官に等しい独立性が保証され、多少仕事に問題があっても一切問題とされないのです。 

 他にも副検事の問題はあります。たとえば、6年前、愛知県の依頼者が『先生、副検事が面会に応じません。』と対策を相談してきました。同行して遺族の気持を少し伝えることができましたが、時間はわずかでした。
 当時、副検事は被害者遺族に面談すらしない時代でした。今でもその風潮は残ってますが、遺族に対して、面談を正面から断ることは無くなりました。
 奈良の副検事の場合はもっとひどい。示談しないことをまるで悪いようにほのめかします。
 奈良で同じ副検事にあたった遺族がいました。3遺族が同じM副検事でした。1番目の遺族は、『先生、副検事が示談をしたのかと聞いてきました。示談をしない私が悪いように言われました。』 
 この事件が終了して、飲酒交通死亡事故の遺族。歩道内の建物敷地に車で突っ込み、男性を死亡させた悪質事故です。この遺族から、M副検事の話『先生、副検事が、どうして損保に書類を提出しないのかと私を怒るんです。』 
 この事件が終了して次の遺族。またまたM副検事の話。『先生、副検事が現場まで来てくれました。いい検事ですわ』と裁判前は副検事を褒め称えてましたが、裁判開始後は遺族は副検事に怒りが爆発。『先生、副検事が警察での加害者の言い分を有利に変えてます。とんでもない検事です。これじゃねつ造です』と。 偶然にも、M副検事が担当した3事件が連続して民事を担当しましたから、副検事の質がわかりました。『検事交代を求めたらどうですか。加害者の味方じゃないかと思う事件がこれまで2つありました。おかしい副検事です。検事交代の申し立てをされたら、検察もおかしいと思いますよ 』と言いましたら、検事交代が認められ、新聞とテレビで取り上げられました。

 副検事がどうしてこうなったのか、 捜査書類だけを見て、遺族に会いたがらない。加害者とは何度も会うが、遺族に会いたがらない。そのため加害者に情が移るんでしょう。おかしな副検事の話は奈良だけではありません。 尼崎でも同じように加害者の味方じゃないかと思う副検事もいました。これも複数の事件の遺族の話から掴んだ事実です。博多の遺族のケースでは、公判1回目に被告人の名前をさん付けで呼んだため、検事交代の申し立てが認められたケースでした。遺族の署名を受け取らなかったため、検事交代が認められたケースもあります。
 これらの例は私が相談を受けたケースだけですから、全国規模で見ると、副検事による被害者への権利侵害は数多くあります。
 これまで、副検事は、検察の砦(捜査情報開示をしない。監視監督機関がない。)に護られてきました。だが、被害者遺族間の情報で、正体がわかるようになってきてます。で、最近の遺族からの相談では、私が最初に聞くのは『副検事の名前はなんていうのですか?』。