どうして危険運転致死罪でないの?

平成17年12月15日  弁護士 松 本   誠

1 危険運転致死傷罪が出来てもうすぐ5年。現場は適用に消極的です。
  たとえば大阪の事件は、飲酒0.5mg以上でアクセルとブレーキを踏み間違えてのバイク後部への衝突死亡事故が業務上過失致死罪(とひき逃げ)で起訴。なぜ危険運転でないかにつき、副検事は『赤信号無視や速度超過がない』、岸和田検察支部長は『その後逃げた時にまっすぐ走ったから危険運転ではない』とわけのわからない理由でした。
  広島で業務上過失致死罪で起訴され、現在公判中の事件も悪質です。
  被疑者は16年8月午後10時15分頃、広島市西区の直線道路で、飲酒運転で反対車線に飛び込み、反対車線を走行中の車と正面衝突し、24歳女性1名死亡、1名重症の事件でした。罪名は危険運転ではなく、業務上過失致死傷罪です。遺族は検察に対し適用罪名の変更を求めましたが、検察はなぜか応じようとしません。問題点は何か?

2 広島事件
  広島事件は、報道では次のような事故でした。
@制限速度30`の道路を時速90〜100キロで走行。
A片ひざをつき片手運転。
B同乗者に何度も運転制止された。
C蛇行運転して反対車線の1台に衝突し、
Dさらに蛇行運転して反対車線2台目に衝突。死亡事故。

 危険運転致死罪は5つの罪がありますが、飲酒の場合、『飲酒により正常な運転が困難』で人を死傷させたが法律要件です。非常に抽象的な法律です。
  本件がなぜ危険運転致死罪でないのかについて、副検事は『カーブでないから制御できない高速度運転でない』との理由を遺族にしました。
  ところがこの理由はおかしい。『制御できない高速度運転』の場合、他の危険運転致死罪として法律があるからです。
  おかしいと遺族が副検事に言うと、高検の部長が応対。高検部長は『片ひざをつき、片手運転をしていたから危険運転でない』との理由でした。余計におかしな理由です。
なんでもいいから、と遺族の申し入れを断る理由を考えたのでしょうか。

 『正常な運転が困難』とは、どういう場合か法律に書いてません。立法段階で問題でした。あまりに法律が抽象的と。問題が今起こっているのです。危険運転の適用について検察はあまりに消極的です。公判中の事件について訴因変更がむずかしいのでしょうが、検察は被害者のためにも新法を勉強すべきです。
  初めから危険運転の起訴を嫌がる雰囲気が検察にあります。副検事制度のためでしょうか。
  広島高検の検事長殿、これは明らかに危険運転です。
  これが危険運転でないなら、どんな場合が危険運転でしょうか。