犯罪被害者等基本保護法の具体施策をどうすべきか

平成18年3月11日  弁護士 松 本   誠

 法務省は現在、犯罪被害者基本保護法案の具体的施策の検討中です。各犯罪被害者団体のヒアリングを先日行いました。交通事故被害者の立場では、立法や行政施策をどうしたらよいのでしょうか。ヒアリングは受身ですが、被害者が声をあげる機会ですので、交通被害者の立場から問題点を整理します。

@ 犯罪被害者の対象
 交通事故の被害者が今回の対象となるのか不安です。一般犯罪の刑罰の上限は10年が多く、業務上過失致死罪の上限が5年で除外といううわさもあります。交通事故の被害者も含まれるべきです。

A 当事者権(質問。起訴。控訴。証人申請等)
 被害者を刑事裁判の傍聴人ではなく、当事者として制度化すべきである。ドイツは当事者権を認めています。

B 付帯私訴
 刑事裁判と民事訴訟が同時に出来ること、いわゆる付帯私訴の制度化。
捜査書類の事前開示をすることなど、適切な保障が前提です。
但し付帯私訴を認めることは現状では交通事故被害者に不利です。
理由=死亡事故の多くは、死人にくちなしとのずさんな捜査が多く、捜査を争う事件が多く、現状は早く終わるので、被害者に利益はない。
 また、損保側は事故からすぐに損保調査会社を通じて事故情報を知っているのに、被害者側はほとんど知らないまま、刑事裁判に向き合わざるを得ない。刑事裁判があるとしても、本当に公正な捜査がなされているとはいえず、付帯私訴は不利益面が多い。

C  捜査情報の早期開示
 被害者を当事者とすることに実効性を持たせるため、捜査情報の早期開示を制度化すべきである。アメリカでは実況見分から2週間後に、調書を開示しているし、ドイツでは警察の捜査終了後送検時に捜査情報を開示している。日本は刑事裁判になる事件も公判開始後であって、あまりに遅すぎる。被害者は知るのが遅すぎて、処罰手続き参加が保障されてない。
 また、刑事裁判にならない事件は、処分後に開示されて、知った時には既に処分が終わっている。あまりにも被害者の知る権利を侵害している。

D  司法改革や公判準備手続き
 公判事件では被害者の意見陳述や謄写権がようやく認められたが、最近公判準備手続きなるものによって、手続きが被害者抜きで早められ、しかも被害者は捜査書類さえ見られずに、終わる可能性が出てきている。
 被害者にようやく認められた意見陳述や公判段階の謄写の権利も、このままでは無意味となる可能性がある。司法改革に被害者の視点が生かされるべきである。被害者の権利を犠牲にして、刑事被告人の権利や裁判の迅速化という利益を追求するのはやめてほしい。刑事裁判の改正にあたっては、必ず被害者の権利を侵害しないか、必ず検証すべきなのに無視されている。

交通犯罪は89万件年間発生し、うち1%だけが公判起訴という実情です。
これは交通事故非犯罪化政策があるためですが、この仕組みも改善する必要があります。そうでないと、本件も含め、何時までも交通事故を軽く見る風潮が改善しません。