拝啓、森山法務大臣殿
平成13年06月18日 弁護士 松 本 誠
悪質運転による交通死の刑の罰則の強化案の提案 ご苦労様です。
平成13年6月15日の日経新聞夕刊で飲酒運転や高速度運転による死亡事故の罰則について、「最低1年以上」とするとの発表をされたとありました。これが事実であれば、井上さんを初めとする悪質な交通事故の遺族の運動にようやく正当な答えが出たわけであります。法案成立に向けて全力で取り組んでほしいと思います。
この法案がもし通れば、業務上過失致死罪のなかでも悪質な飲酒運転と高速度運転による死亡事故の刑は「1年以上、15年以下」となるのですね。井上さんたち遺族の痛烈とも言える声がようやく届いた感じです。
ただ、この法案が成立するとしてなお、注文をつけたいことがあります。
(1) 摘発について
まず、飲酒運転の摘発は飲む側だけでなく、飲ませる側にも力点をおいた取締りをしないと効果がない、ということです。飲食店はもとより、同乗者への罰則強化にも力を注がないと、法案成立の効果は半減するということであります。
飲酒運転の摘発は早朝の事故はあまりなされていないようですが、かならず、事故現場に臨む時には飲酒の程度を測る機器を持ち込むべきです。
また、トラックに速度の記録、すなわちタコメーターが備え付けられているように乗用車にも備置を義務付けるべきです。そうでなければ、正直に速度を言う運転者だけが処罰され、嘘をいうのが当たり前の悪質なドライバーを保護することとなります。
交通事故の摘発のソフト面にも意を注いで下さるようお願いします。
(2) 運用の面
次に、運用の面です。業務上過失致死罪の適用については、刑の現状の面では極めて甘い運用がなされております。一昨年までの刑でいえば、2年以上の実刑はきわめてわずかであり、年に数件だけでした。これは一昨年までの司法統計で明らかです。昨年はなぜか最高裁が司法統計から業か致死罪のデータを詳細に示さなかったためにどのくらいの実刑の数であったかさだけではありません。この点最高裁事務局に対して業務上過失致死罪のデータを公開するよう、本年9月予定の司法統計では隠すことのないよう願います。
話が横にそれましたが、現状でも2年以上5年までのの実刑はまずありませんので、これを運用する側に検察庁に対して、具体的な指示と監督をしていただきたい。とくに副検事諸氏は昭和61年以降の交通事故の運用面では相当の手抜きをしておられまして、起訴率は73%から12%にまで低下しております。死亡事故での不起訴率も10倍にもなっていることをご存知でしょうか?
副検事諸氏は被害者からみれば、命を守る使命感を喪失していると思えるほどです。現場の様子をご存知ないのであえていうと、交通死亡事件が起こってからの遺族への副検事諸氏の言動の中には平気で「示談はまだですか」という言葉を多く聞きます。 被害者遺族の気持ちに鈍感どころか、何とか、公判事件としたくない気持ちがよく表れているのです。
かかる運用の面の改善に手をつけるべきです。具体的には死亡事故や重度傷害事故の起訴率を大幅に上げることであります。死亡事故であれば、起訴率を8割から9割とすべきでしょう。結果の重要性を重んずべきです。
万一被害者にも過失ありというような反論は法廷等で反論させるべきで、被害者と加害者の過失を比べて5割以上加害者側にあれば、文句なく、起訴すべきでしょう。それが命を守る検察の使命であるのではないでしょうか。