いのちと向きあう:川口・保育園児死傷事故/1 小山内夢乃ちゃん(4) /埼玉
◇今も宝物、毎日名前呼ぶ 加害者懲らしめるより、犠牲減らしたい
4人の幼い命が奪われた痛ましい事故から間もなく3カ月がたとうとしている。かわいい盛りのわが子を突然失った親の悲しみは深く、加害者を業務上過失致死傷罪にしか問えない法律の壁にも苦しめられている。ドライバーなら誰もが加害者、被害者になり得る交通事故。だからこそ、ハンドルを握る責任の重さをもう一度考えてほしい−−。そう訴え、小さな命と向きあう4人の親に話を聞いた。【町田結子】
家中を走り回って、思いっきり転んでまた走り回って。小山内夢乃(ゆめの)ちゃん(4)はわんぱくで思いやりのある子。母陽(あき)子さん(27)が料理を失敗しても「気にしなくていいよ」って食べてくれた
「ぞう組」で一番小さいから、みんなにかわいがられて。保育園の給食が大好きでした。給食残さず食べたよ、今日は一番遅くなかったよとか。事故の直前も給食の話をしていたそうです。大きくなりたいっていう気持ちがあったから「おかわりしたら5歳になるかな」とか。「ご飯いっぱい食べれば大きくなるよ」って言ってました。事故の日の朝も「ご飯食べたい」って言ってたのに、ご飯じゃなくてパンで。あの時お米炊いて、保育園も遅刻してれば生きてたのかな……。
病院に着くと、夢乃ちゃんの心臓は既に止まっていた。首を振る医師に、陽子さんは「やだ、絶対やだ」と叫んだ
見られなかったです。信じたくなかった。きつすぎた。(病院に向かう車の中で)早く行って痛い所をさすってあげようと思っていたのに。「大丈夫だよ」って言ってあげようと思っていたのに。骨折れてても「絶対治るからね」って言ってあげれば頑張ってくれると思ってたのに。一生のうち一度も見たくない娘の姿を見ました。
「悲しみが大きすぎて加害者は頭になかった」と父亮さん(27)もいう。だが葬儀を終え、事故のことを考え始めた
20日間ぐらい仕事を休んで家にいました。法律を知って、どういう罪か、どういう刑か調べて。加害者に危険運転致死傷罪の適用を求めたい、(法適用の)幅を広げたいと思いました。今の危険運転致死傷罪は適用条件が厳しすぎる。よほど悪質な人じゃないと当てはまらない。4人亡くなっても10人亡くなっても同じとも言われました。事故の経緯だけでなく、引き起こした結果も考慮してほしい。
法改正が実現しても、今回の加害者に適用されないかもしれません。だけど、初めは加害者を懲らしめたい気持ちが強かったのですが、今は心から交通事故を減らしたい。私たちのようにつらい思いをする人が減ってほしい、少しでも子供たちを守りたい。娘の死を無駄にしたくないんです。
「法改正できれば娘に報告できる」と話す亮さん。「1日も忘れない」という気持ちを込め、これまでと同じ生活を続けている
自分で言うのもなんだけど、ほんとパパっ子で。いつも一緒だったんです。トイレもお風呂もご飯も。寝る前はひざの上に座って、牛乳あっためてほ乳瓶で飲むんですよ。だから、今もご飯食べる時は名前を呼ぶ。「夢、ご飯だよ。おいで」。「お風呂だよ」って。聞こえればいいと思うんです。忘れなんかしない、今も宝物だよって。=つづく
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◇事故の概要
川口市で9月25日朝、保育園児の列に乗用車が突っ込む事故があり、4人が死亡、17人が重軽傷を負った。さいたま地検は10月、運転していた井沢英行容疑者(38)を業務上過失致死傷罪(最高刑5年)で起訴。遺族は最高刑20年の危険運転致死傷罪の適用を求めたが、適用基準の飲酒、大幅な速度超過など悪質運転の故意性が認められなかった。遺族は現在、井沢被告への同罪の適用と、業務上過失致死傷罪の刑の上限引き上げなどを訴えて署名活動を続けている。
毎日新聞 2006年12月19日