

◇声上げて“風”全国へ
「親展 検事総長様」「人を殺した人を罰金だけで済ますなんて、先進国の日本であっていいことでしょうか」
03年初春、金澤喜三さん(55)=彦根市=に検察トップへの手紙を書かせたのは、強い憤りだった。父鉄雄さん(当時77歳)は02年5月、乗用車を運転中、トラックに追突されて死亡。だが、今か今かと待った書類送検から、さらに5カ月待たされ、面会した担当検事は言った。「起訴するかは分からない」
警察に言われて謝罪に来て以来、一度も顔を出さない加害者の20代の運転手の男。初対面で書類に押印するよう平然と話した保険会社員。穏便な処分を望む遺族調書を作ろうとした警察官−−。不起訴の意味を知った時、怒りは頂点に達した。
結局、金澤さんの手紙から間もなく、男は起訴され、判決は禁固3年、執行猶予5年(求刑禁固3年6月)。金澤さんは控訴を求めたが、検察は拒否。それでも金澤さんは民事訴訟を起こし、極めて異例な加害者本人の出廷を実現した。
さらに、男の減軽理由が「過労」だったことを見逃さず、公判で男が証言した居眠り運転を、運送会社がただの「脇見」と虚偽報告したことを突き止めた。国交省や運輸局に何度も足を運び、車両2台の使用停止35日間の行政処分に、こぎつけたのは、執念だった。
「事故で亡くなった人は、もうアルバムが増えることがない。そんな人生を他の誰にも送ってほしくない」。そんな思いが突き動かし、04年には「交通事故被害者遺族の声を届ける会」を発足。法務省や警察庁などに要望書を出し続けている。
金澤さんは言う。「役所は事故は減ったと言うが、今も年間1万人が亡くなっている。目指すべきは減少ではなく、ゼロ」。スウェーデンの施策「ビジョン・ゼロ」(交通事故死ゼロ)が金澤さんの指標だ。
今月18日は05年に国連で採択された「世界交通事故犠牲者の日」。金澤さんは「事故現場で黄色い風車を回そう」と呼びかけている。声を上げられるわずかの遺族から、交通事故死ゼロへの“風”が全国に広がることを願って。
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犯罪被害者の等身大オブジェや遺品を展示する「生命のメッセージ展in滋賀」は16日、近江八幡市鷹飼町の県立男女共同参画センターで始まる。18日まで。【近藤希実】
毎日新聞 2007年11月16日