2005. 07. 29 読売新聞朝刊

高1交通死「不起訴不当」 「正義見せてもらった」両親ら再捜査に期待=徳島

 ◆審査会が「不起訴不当」 公訴時効近づく
  徳島市元町の国道交差点で2000年11月、自転車で横断していた同市富田町、徳島市立高1年野口温史さん(当時16歳)が同市内の男性会社員の乗用車にはねられた死亡事故。男性を不起訴とした地検の判断に、徳島検察審査会が28日に出した結論は「不起訴不当」だった。両親らは徳島市内で会見し、「常識的な目で判断してもらえた」と安堵(あんど)の表情を見せる一方で、「11月の公訴時効までに処罰を」と検察側の再捜査に期待を込めた。
  議決の中で同審査会は「たとえ対面信号が青色信号であったとしても、安全な速度と方法で進行しなかった」と男性側の過失を指摘。遺族側が提出した信号サイクル表や専門家の事故鑑定書にも触れ、「対面信号の色が黄色か赤色だった可能性もある」として、科学的な捜査を求めた。
  地裁近くの弁護士事務所で開いた会見には、父輝実さん(56)と母静江さん(56)、姉有香さん(27)が出席。輝実さんは「『捜査がおかしい』と感じてくれる人がいたことがうれしい。久々に正義を見せてもらった」と議決を評価。検察側には、「ビデオテープなど提出していない資料を見てもらい、まだ会っていない目撃者の話も聞いてほしい」と切望した。
  両親らは01年冬、現場で目撃情報の提供を呼びかけ、10人から証言を得た。真相究明を求めるための署名活動にも取り組み、約6万3000人分を同審査会などに提出。男性に約9400万円の損害賠償を求める民事訴訟も起こし、現在も争っている。
  担当の川真田正憲弁護士は「満点の判断ではないが、目撃証言や民事公判での尋問調書などすべての証拠が反映された。公訴時効まで4か月。検察側には迅速な再捜査を」と求めた。
  ◆「苦労してきたかいあった」 事故現場で議決報告
  不起訴不当の知らせを受けたこの日、事故以来、毎日のように訪れている現場の国道交差点で両親と有香さんは手を合わせ、温史さんに審査会の議決を報告した。
  チラシを配ったり、署名を集めたりした4年8か月。「待ち望んでいた『起訴相当』ではなかったが、ここまで苦労してきたかいがあった」と振り返った輝実さん。息子の遺影に向かって目を閉じた静江さんの耳には、「僕の声が届いたんだね」と喜ぶ温史さんの声が聞こえたという。公訴時効まで4か月。有香さんも「がんばるからね」と亡き弟に誓った。
 
  写真=事故現場で手を合わせる輝実さん(中央)ら遺族(徳島市元町1の交差点で)