判決を迎えた朝、自宅を出る盛山哲志さんと陽子さん=埼玉県川口市で16日午前8時45分ごろ、町田結子撮影
埼玉県川口市で昨年9月、保育園児らの列に車が突っ込み21人が死傷した事故で、業務上過失致死傷罪に問われた同県栗橋町南栗橋、運送業手伝い、井沢英行被告(38)に対し、さいたま地裁は16日、求刑通り同罪の最高刑となる懲役5年を言い渡した。中谷雄二郎裁判長は「過失行為は危険かつ悪質極まりない。事故は被告の根深い無謀で危険な運転性癖の発露」と指弾した。
判決によると、井沢被告は昨年9月25日午前9時55分ごろ、川口市戸塚東の市道でワゴン車を運転中、左手で助手席のカセットテーププレーヤーを操作して脇見運転。歩いて公園に向かう私立小鳩保育園の園児ら41人の列に右後方から突っ込み、園児4人を死亡させ、保育士と園児計17人に重軽傷を負わせた。
中谷裁判長は判決で、井沢被告が交通違反を繰り返し、同じ脇見で物損事故を3カ月前に起こしたと指摘。生活道路で急加速しながら脇見運転したことを「危険運転行為と実質的危険性に差異のない過失」として、「法定刑の上限の懲役5年をもってしても社会的非難、罪責を十分に評価しきれない」と断罪した。
法定速度以下の事故で危険運転致死傷罪(懲役20年以下)で起訴されなかったため、遺族は今年2月、業務上過失致死傷罪の刑の上限を懲役・禁固10年以上に引き上げるよう求め、約21万人の署名を法務省に提出。政府は自動車運転過失致死傷罪(懲役・禁固7年以下)の新設を柱とする刑法改正案を13日の閣議で決定している。【酒井祥宏】
◇業務上過失致死罪の刑の上限引き上げに署名活動
傍聴席で判決を聞くと、死亡した盛山陽南子(ひなこ)ちゃん(当時3歳)の父哲志さん(26)と母陽子さん(29)は一瞬、険しい表情になり、前を見つめた。
「生まれた沖縄の太陽のような明るい子に」。陽南子ちゃんは、名前通りによく笑う子だった。あの日病院で哲志さんは、体の一部がなくなったように感じた。陽子さんは食事を作ればフライパンを持ってまねをする姿を、洗濯物をたためば手伝ってくれた姿を思い出し、その度に泣いた。
昨年10月16日。井沢被告は業務上過失致死傷罪で起訴された。「『脇見運転なら5年で済む』と考えられたら、悪質ドライバーは減らない。子供たちの死をかけて社会に訴えたい」と、同罪の刑の上限引き上げなどを求める署名活動を始めた。
判決後、哲志さんは「重大な結果に配慮してもらい感謝している」と話した。家に戻ったら遺影に話しかけるつもりだ。「一生懸命やった結果が出たよ」【町田結子】