現在位置:asahi.com>社会>裁判> 記事

運転手に酒出した店主に有罪判決 埼玉・9人死傷事故

2008年06月05日20時50分

 埼玉県熊谷市で9人が死傷した酒酔い運転事故で、運転者に酒を出したとして道路交通法違反(酒類提供)の罪に問われた同市小泉、飲食店経営大久保博明被告(45)に対し、さいたま地裁は5日、懲役2年執行猶予5年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。(加藤真太郎)

 大谷吉史裁判長は「(運転者に対して)酒酔い運転を止めず、酒を提供し続けたのは、酒の販売で自己の利益を確保しようとしたもので、身勝手な犯行動機にくむべき点は乏しく、刑事責任は重大」と述べた。

 道交法の酒類提供は、06年に元福岡市職員が起こした飲酒運転事故を契機に、昨年9月施行の改正道交法に盛り込まれ、大久保被告が全国で初めて起訴された。

 判決によると、大久保被告は2月17日午後1時半ごろから約5時間、熊谷市の自ら経営する飲食店で、来店したゴルフ仲間の同市赤城町、無職玉川清被告(32)=危険運転致死傷罪で起訴=にビールや焼酎を提供。玉川被告は同7時25分ごろ、乗用車を運転して対向車線にはみ出し、軽乗用車2台と衝突。軽乗用車の同県行田市の夫婦が死亡。玉川被告の車に同乗した2人を含む6人に重軽傷を負わせた。玉川被告も重傷を負った。

 検察は論告で「少なくとも玉川被告にビール1杯、焼酎のウーロン茶割り約8杯の酒を提供し、帰る際、店の前で『気を付けてね』と見送った」と指摘していた。

 大谷裁判長は「玉川被告が運転代行やタクシーを手配せず、泥酔していた状況を知りながら、酒酔い運転を止める行動をしなかった」と指摘。大久保被告が「仲間うちで酒の提供を拒否できなかった」と公判で主張したことについて、「仲間なら酒酔い運転を止める注意は容易ともいえる。結局は酒の販売で自己の利益を確保しようとした。犯行動機は自己中心的だ」と指摘した。

 しかし、玉川被告が店を出た後、いったん駐車場に車を止め、別の店の開店までの時間つぶしに運転を再開して事故を起こした点を重視。「(大久保被告が)異常な暴走行為を予見してまで酒を出したことをうかがわせる証拠は認められない」と述べた上で、「深く反省の態度を示している」などとし、実刑判決を回避した。

PR情報

このページのトップに戻る